「スポーツがある人生の楽しさ」を






 エ ー ル イ ン タ ビ ュ ー : 日本バレーボール協会指導普及委員会副委員長 / GOLD PLAN副委員長 緒方 良


   スポーツと云う真剣な遊びをより楽しめるかどうかは、指導者の基本技術の
   引き出し次第です。


内藤 先日、エールで特別講義をして頂いた際に、スポーツに対する定義として「スポーツとは、『真剣な遊び』を『楽しむ』こと」というお話がありました。改めてお話願えますか。
 
緒方 スポーツをプレイする、と云うように、スポーツはそもそも遊びです。
遊びですが、ルールに則る。そこが、真剣さが生まれてくる由縁であり、また無秩序な遊びより楽しめる点です。
そして、ナショナルチームでもママさんバレーでも同じですが、出来ると楽しいし、出来ないとつまらない。出来るようになった、という達成感を感じられるとアドレナリンが出て楽しくなる。
だから、スポーツと云う真剣な遊びをより楽しめるかどうかは、指導者次第です。
指導者に、しっかりとした基本技術の引き出しがあれば、ベースとなるところがしっかりするので後々までずっと楽しい。歳をとっても、体やボールをコントロールできますから。
 


内藤 私は、ボール遊びを楽しむための「ボールでチャレンジ」という幼年児童の教室や、小学校3年生からのバレーボール初心者の教室等も担当しているのですが、そうした小さな子達にも、基本技術を指導するべきでしょうか。
 
緒方 小学生のうちは、基本技術定着のための練習は不要だと思います。バレーと云うひとつのカテゴリ、真剣な遊びの集団に深く入ってきたら基本の反復は必要だけど、それ以前の段階ではそこまでする必要はない。

ただ楽しくやろうっていうだけだと厚みがないけど、それなりに正しい基本練習をして汗をかいて、勝ちに向かって励まし合っていけたら小学生のうちは充分じゃないでしょうか。
 
   チームが勝ちたいと感じ始めたなら、指導者としては放っておいてあげる事です。

内藤 スポーツはともすると「つらくても苦しくても歯を食いしばってそれを耐えて…」という、悲愴感がつきまとう形で語られることが多いですが、本来楽しいものをどうしたら正しく楽しめるか、という目的に向かって、緒方さんの視点は一貫されてますね。
 
緒方 繰り返しになりますが、スポーツは真剣な「遊び」ですからね。本来は楽しいんです。
遊びとしての達成感を感じて喜びとするためには、幼年期以降には地道な基本の繰り返しが必要となってきますが、それも「どうしたらゲームをより楽しめるか」という点から出発した考えです。
ただ、私も現場で当事者としてやっている頃には、今のようには客観的に見えていなかったと思います。

1万時間の法則、っていうのがひところ話題になったでしょう。
どのジャンルでもトップクラスの人は、そのジャンルの練習や勉強を1万時間はやっているという内容です。確かに1万時間やれば、他の人には見えないものが見えるようになる。当事者でありながらも、突き抜けた俯瞰的な視野も獲得できる可能性が生まれると思います。
 


内藤 1万時間というと、膨大な時間ですね。
 
緒方 中高大と10年間、3時間ずつやったら1万時間を超えます。それでも、1万時間を費やせば誰でもトップクラスになれるというわけではなく、トップクラスの人は1万時間を費やしているという共通性がある、ということです。
ましてや楽しむだけならそこまでしなくてもいいんです。やるべきはしっかりとした基本の反復だけでもいい。その先で生徒や選手がその上に行きたい、と思うようになったら指導者の仕事は終わりと言っていいと思います。

しっかりとした基本の反復のその先で、チームが勝ちたいと感じ始めたなら、指導者としては放っておいてあげる事です。
技術の先の技能の部分は、各自が獲得するものですから指導しようとしてはいけないし、そこで指導者が自ら口をはさんだりイライラしたりしたら、やる気に水を掛けるようなものです。
 
コーチングするベースをきちっと整理して持っておけば、あとは自由でいいんです。>>>